税と控除

ペアローン・共働きの住宅ローン控除:それぞれの残高で計算

ペアローンでは夫婦がそれぞれ自分の借入れの年末残高で住宅ローン控除を計算し、各自が申告します。5000万円を3000万円と2000万円に分けた例で、単独で借りる場合との差と所得税額の影響を確認します。

この記事のポイント

  • ペアローンでは、夫婦がそれぞれ自分の年末残高と控除限度額で控除額を計算し、各自が申告します。
  • 5000万円を3000万円と2000万円に分けた例では、13年間の合計が3,781,500円で、単独より605,700円多くなります。
  • 所得税額が少ない側は控除を使い切れないことがあり、例の妻は13年間で910,000円しか所得税から引けません。
  • 居住や合計所得金額の要件は、控除を受ける人ごとに判定されます。

ペアローンは2人が別々に控除を計算する

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を取得し、自分で住んでいる個人ごとに、その人の住宅ローンの年末残高をもとに計算する制度です。ペアローンのように夫婦がそれぞれ自分の名義でローンを組むと、要件を満たす2人が、それぞれの年末残高と控除限度額で控除額を計算します。国土交通省の案内でも、共有名義の場合は確定申告を各自で行うとしています。

計算例として、2026年4月にZEH水準省エネ住宅(控除限度額24.5万円)を取得し、夫3000万円・妻2000万円のペアローン(どちらも35年・金利0.9%)を組んだと仮定します。13年間の控除額の合計は夫2,269,000円、妻1,512,500円で、合わせて3,781,500円です。同じ5000万円を1人で借りた場合の3,175,800円より605,700円多くなります。月々の返済額は夫83,295円・妻55,530円で、合計138,825円は1人で5000万円を借りた場合と同じです。

なぜ分けると控除額の合計が増えるのか

控除限度額は控除を受ける人ごとに当てはめるため、1人で5000万円を借りると、年末残高×0.7%(1年目なら約34万円)が限度額24.5万円で頭打ちになり、超えた分は控除に使えません。2人に分けると、夫の1年目は206,500円、妻は137,700円で、どちらも限度額を下回るため、計算した額がそのまま控除額になります。

ただし、これは借入額が大きく、1人では限度額を超える場合の話です。借入額が小さく、1人でも残高×0.7%が限度額に届かないなら、分けても合計額はほとんど変わりません。また、控除額が増えても、それぞれが納める所得税額(と一定の範囲の住民税額)を超えては控除されない点が重要です。

1人で5000万円を借りた場合の年ごとの控除額
  1. 2026年245,000円
  2. 2027年245,000円
  3. 2028年245,000円
  4. 2029年245,000円
  5. 2030年245,000円
  6. 2031年245,000円
  7. 2032年245,000円
  8. 2033年245,000円
  9. 2034年245,000円
  10. 2035年245,000円
  11. 2036年245,000円
  12. 2037年245,000円
  13. 2038年235,800円

2026年4月入居・ZEH水準・35年・金利0.9%・元利均等、特例対象個人に当たらない場合。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。

グラフの数値を表で見る
1人で5000万円を借りた場合の年ごとの控除額
年年末残高控除額
2026年49,187,265円245,000円
2027年47,958,986円245,000円
2028年46,719,607円245,000円
2029年45,469,026円245,000円
2030年44,207,143円245,000円
2031年42,933,857円245,000円
2032年41,649,065円245,000円
2033年40,352,661円245,000円
2034年39,044,543円245,000円
2035年37,724,604円245,000円
2036年36,392,735円245,000円
2037年35,048,828円245,000円
2038年33,692,776円235,800円

所得税額が少ない側は、控除を使い切れないことがある

上の例で、控除前の所得税額を夫は年16万円、妻は年7万円と仮定すると、所得税から控除できる額は次のようになります。

2026年4月入居・ZEH水準省エネ住宅・夫3000万円/妻2000万円・35年・金利0.9%、所得税額は夫16万円・妻7万円と仮定
年夫の控除額夫の所得税から妻の控除額妻の所得税から
1年目206,500円160,000円137,700円70,000円
5年目185,600円160,000円123,700円70,000円
10年目158,400円158,400円105,600円70,000円
13年目141,500円141,500円94,300円70,000円
13年間の合計2,269,000円2,039,900円1,512,500円910,000円

所得税から控除できる額は、夫婦合わせて2,949,900円です。1人で5000万円を借り、所得税額が年16万円だった場合の2,080,000円より大きくなりますが、妻の側では、特に前半の年に控除額の半分近くが所得税から引ききれていません。引ききれない額は、前年分の所得税の課税総所得金額等の5%(97,500円が上限)まで翌年度の住民税から差し引かれます(総務省)。育児休業や働き方の変化で所得税額が下がる年は、この差がさらに広がります。

妻(2000万円)の年ごとの控除額
  1. 2026年137,700円
  2. 2027年134,200円
  3. 2028年130,800円
  4. 2029年127,300円
  5. 2030年123,700円
  6. 2031年120,200円
  7. 2032年116,600円
  8. 2033年112,900円
  9. 2034年109,300円
  10. 2035年105,600円
  11. 2036年101,800円
  12. 2037年98,100円
  13. 2038年94,300円

2026年4月入居・ZEH水準・35年・金利0.9%。グラフは所得税額の上限を考慮しない控除額で、例の妻の所得税額は年7万円です。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。

グラフの数値を表で見る
妻(2000万円)の年ごとの控除額
年年末残高控除額
2026年19,674,904円137,700円
2027年19,183,589円134,200円
2028年18,687,835円130,800円
2029年18,187,599円127,300円
2030年17,682,842円123,700円
2031年17,173,524円120,200円
2032年16,659,604円116,600円
2033年16,141,039円112,900円
2034年15,617,788円109,300円
2035年15,089,806円105,600円
2036年14,557,056円101,800円
2037年14,019,490円98,100円
2038年13,477,064円94,300円

ペアローン・収入合算・連帯債務の違い

夫婦の収入で住宅ローンを組む方法はいくつかあり、控除の受け方もそれに沿って変わります。【フラット35】の説明を例に整理します。

  • ペアローン:2人がそれぞれ申込人となって2つの融資を組みます。【フラット35】では、それぞれの借入額が100万円以上1億2,000万円以下で、2つの合計は住宅の建設費または購入価額以下です。一方の申込人は、もう一方から見て「収入合算できる方」の要件に当てはまる必要があります。
  • 収入合算:1つのローンに、申込人本人と要件を満たす1人の収入を合算します。【フラット35】では、合算する人は連帯債務者になる必要があります。
  • 連帯債務:2人が1つの借入れ全体について返済の責任を負う形です。住宅ローン控除の申告では「(付表)連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の計算明細書」が必要になります。

返済責任や団体信用生命保険の扱いも方法ごとに異なります。違いはペアローンと収入合算の違いや連帯債務・連帯保証・ペアローンの解説で詳しく説明しています。

ペアローンの借入条件で、控除額に関係するところ

ペアローンの条件は金融機関や商品によって異なります。【フラット35】のペアローン(2026年4月1日現在)では、次のような決まりがあります。

  • それぞれの融資で、異なる借入期間を設定できる。
  • 融資率(9割以下か9割超か)は、2つの融資を合算して計算し、借入金利が決まる。
  • 【フラット35】Sなどの金利引下げ制度を使う場合は、2つの融資それぞれに同じ内容の引下げが適用される。

借入期間を夫婦で変えると、短い方のローンは残高が速く減るため、控除額も早く小さくなります。たとえば妻のローンだけ期間を短くすると、月々の返済額は増える一方、妻の年末残高×0.7%が下がるのも早まります。分け方や期間を決めるときは、返済額だけでなく、2人それぞれの控除額と所得税額の関係もあわせて計算しておくと判断しやすくなります。

2人がそれぞれ満たす必要がある要件

  • 居住:控除を受ける人それぞれが、取得から6か月以内に住み始め、年末まで住み続けていること。
  • 合計所得金額:控除を受ける年分の合計所得金額が2,000万円以下(40平方メートル以上50平方メートル未満の住宅では1,000万円以下)であることは、1人ずつ判定します。
  • 床面積:夫婦で共有する住宅は、持分を掛けるのではなく、ほかの人の持分を含めた建物全体の床面積で判断します(マンションは専有部分の面積)。
  • 取得対価と持分:控除の基準は年末残高と取得対価の少ない方です。共有住宅の取得対価や、敷地と家屋の持分が異なる場合の扱いは国税庁の質疑応答事例にも項目があるため、持分の決め方は税務署で確認しておくと安心です。

証明書類も人数分が必要になる場合があります。国土交通省は、認定長期優良住宅建築証明書について、確定申告を行う人数分が必要と案内しています。

1人分ずつ試算して合計する

住宅ローン控除シミュレーションは1人分の借入れを計算する形なので、ペアローンの場合は夫と妻の条件を1回ずつ入力し、結果を足し合わせてください。借入額・返済期間・金利はそれぞれのローンの条件、住宅の区分と入居年月は共通、「毎年の所得税額」はそれぞれの源泉徴収票の目安を入れます。

借入額の分け方を変えると、月々の返済額は合計で変わらなくても、控除額と所得税額の関係が変わります。1人で借りた場合と比べるときは、同じ借入額で1回計算しておくと差が分かります。返済額そのものは返済予算シミュレーションでも確認できます。

参照した情報

本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。