この記事のポイント
- 全期間固定金利型は完済まで金利と返済額が変わらない一方、一般に変動金利型より金利が高めです。
- 2,500万円・35年・固定1.8%の例では、変動0.7%が3年ごとに0.25〜0.5ポイント上がる間で総額が逆転しました。
- 変動金利が固定金利を上回っても、残高が小さいぶん毎月の返済額はすぐには逆転しません。
- 【フラット35】の借入金利は、申込時ではなく資金受取時の金利になります。
全期間固定金利型とは:完済まで契約時の金利で返す
全国銀行協会の解説では、借入れ全期間にわたって金利が変わらないタイプを「全期間固定金利型」と呼び、借入時から完済まで契約時の金利で返済すると説明しています。完済までの毎回の返済額が確定しているので返済計画を立てやすく、金利の低い時期に契約すれば最後まで低い金利のままになります。その一方で、一般的に変動金利型に比べて金利が高めに設定されているとされています。
住宅金融支援機構の【フラット35】も、民間金融機関と同機構が提携して提供する最長35年の全期間固定金利の住宅ローンで、借入時に返済終了までの金利が確定すると案内されています。返済額が変わらない安心と、当初の金利の高さを、どう比べるかがこのページのテーマです。
計算例:2,500万円・35年、固定1.8%と変動0.7%
計算例として、2,500万円を35年(420回)で借りる場合を考えます。全期間固定を1.8%、変動金利を当初0.7%とし、変動金利は3年ごとに0.25ポイントずつ上がり、3.5%で止まると仮定しました。どの数字も説明用で、実際の金利や予測ではありません。
固定1.8%の毎月の返済額は80,273円で、総返済額は33,714,288円です。変動金利は67,131円から始まり、最後の2年(397回目以降)は83,850円になります。総返済額は32,560,569円で、このシナリオでは固定金利のほうが1,153,719円多くなります。最初の3年間だけで見ると、固定金利は変動金利より473,112円多く払っています。
変動金利の上がり方を変えると、総額はどこで逆転する?
同じ「3年ごと・上限3.5%」のまま、1回の上昇幅を変えた結果です。
| 変動金利の上昇幅(3年ごと) | 最終的な変動金利 | 最大の毎月返済額 | 総返済額 | 固定との差 |
|---|---|---|---|---|
| 据え置き | 0.7% | 67,131円 | 28,194,389円 | -5,519,899円 |
| 0.1ポイント | 1.8% | 73,483円 | 29,873,817円 | -3,840,471円 |
| 0.25ポイント | 3.45% | 83,850円 | 32,560,569円 | -1,153,719円 |
| 0.5ポイント | 3.5% | 92,810円 | 36,093,984円 | +2,379,696円 |
| 0.75ポイント | 3.5% | 95,754円 | 37,801,584円 | +4,087,296円 |
| 1ポイント | 3.5% | 97,211円 | 38,751,180円 | +5,036,892円 |
この例では、3年ごとに0.25ポイントと0.5ポイントの間で総額が逆転します。固定金利の総額が多くなるか少なくなるかは、変動金利の上がり方次第で、事前にはどちらとも言えません。
変動金利が固定金利を超えても、毎月の返済額はすぐには逆転しない
上の0.25ポイントのシナリオで、変動金利は16年目に1.95%となり、固定金利の1.8%を超えます。それでも毎月の返済額は78,315円で、固定金利の80,273円を下回ったままです。変動金利の返済額が固定金利を初めて上回るのは、22年目(253回目)に2.45%になってからで、81,242円です。
当初の低い金利で返済が進んだぶん、変動金利のほうが残高が小さくなっているためです。金利の数字だけを見て「固定金利を超えたから損」と判断するのではなく、残高と残り期間を含めた返済額や総額で比べる必要があります。この仕組みは変動金利と固定金利の比較の解説でも別の条件で計算しています。
- 固定1.8%
- 変動0.7%から3年ごとに+0.25
変動金利は0.7%から3年ごとに0.25ポイント上がり、3.5%で止まると仮定。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 固定1.8% | 変動0.7%から3年ごとに+0.25 | |
|---|---|---|
| 1年目 | 80,273円 | 67,131円 |
| 5年目 | 80,273円 | 69,753円 |
| 10年目 | 80,273円 | 74,449円 |
| 15年目 | 80,273円 | 76,493円 |
| 20年目 | 80,273円 | 79,903円 |
| 25年目 | 80,273円 | 82,320円 |
| 30年目 | 80,273円 | 83,122円 |
| 35年目 | 80,273円 | 83,850円 |
| 総返済額 | 33,714,288円 | 32,560,569円 |
金利が決まるのは資金を受け取るとき
全期間固定でも、申し込んだ時点で金利が決まるとは限りません。【フラット35】のご利用条件では、借入金利は申込時ではなく資金受取時の金利となり、資金の受取日は取扱金融機関が定める日とされています。また、借入期間(20年以下・21年以上)、融資率(9割以下・9割超)、加入する団体信用生命保険の種類などに応じて借入金利が異なり、取扱金融機関によっても異なります(2026年4月1日現在)。
申込みから資金の受取りまでの間に金利が変わると、毎月の返済額も変わります。その幅の計算はフラット35の金利が決まる時期で扱っています。【フラット35】には一定期間の金利引下げ制度もあり、利用すると金利が途中で変わるため、全期間同じ金利という前提の試算とは一致しなくなります。
全期間固定を選ぶ前に確認したいこと
全期間固定金利の「高めの金利」は、返済額が変わらないことへの対価と考えることができます。その対価に見合うかどうかは、家計の余裕と、金利が上がった場合の対応力によって人それぞれです。次の点を確認しておくと、比較がしやすくなります。
- 固定金利と変動金利の当初の毎月の差額(上の例では13,142円)を、家計で無理なく払えるか
- 変動金利を選んだ場合に、どの上昇幅まで返済を続けられるか
- 繰上返済をする予定があるか(残高が早く減れば、金利差の影響も小さくなる)
- 手数料・保証料・団体信用生命保険の扱いなど、金利以外の条件の違い
固定と変動を組み合わせる方法もあります。考え方はミックスローンの解説で計算しています。
総額が確定しているから、繰上返済の効果も読みやすい
全期間固定では金利が変わらないため、手元資金で元金を減らしたときに減る利息も、借入時の条件だけで計算できます。全国銀行協会の解説にあるとおり、繰上返済した資金は元金に充てられ、その元金にかかる利息の支払いがなくなります。
上の2,500万円・固定1.8%の例で、6年目の初め(60回返済後)に100万円を繰上返済すると、期間短縮型なら返済期間が21か月短くなり、減る利息は689,651円です。返済額軽減型なら毎月の返済額が76,676円になり、減る利息は294,918円です。いずれも手数料0円とした試算です。変動金利では将来の金利によってこの効果も変わりますが、全期間固定なら計算した数字がそのまま目安になります。
60回返済後に100万円を繰上返済、手数料0円とした試算。
元利均等・毎月返済で本サイトの計算式により算出(金利は計算例で、市場金利や予測ではありません)。
グラフの数値を表で見る
| 方法 | 利息の合計 | 毎月の返済額 | 返済期間 |
|---|---|---|---|
| 繰上返済なし | 8,714,288円 | 80,273円 | 35年 |
| 期間短縮型 | 8,024,637円 | 80,273円 | 33年3か月 |
| 返済額軽減型 | 8,419,370円 | 76,676円 | 35年 |
自分の条件で固定と変動を比べる
変動金利と固定金利の比較シミュレーションに、借入額・返済期間・固定金利・変動金利の当初金利・上昇幅・上昇の間隔・上限を入れると、総返済額の差と上昇幅ごとの比較表が表示されます。金融機関から提示された金利があれば、それぞれの欄に入れて試してください。
全期間固定で借りたあとに手元資金で元金を減らす効果は繰り上げ返済シミュレーションで確認できます。どの結果も特定の金利タイプを勧めるものではなく、上がり方の仮定ごとに負担の幅を見るための材料です。
参照した情報
本記事は一般的な仕組みと計算の読み方を説明します。契約の条件は金融機関の書類で確認してください。